漢方私論
インフルエンザ流行始め、体調を崩しやすい季節となりました。こういう季節だからこそぜひ漢方をご紹介させていただきます。漢方と言っても、私が捏ねたり煎じたりして調合するものではなく既製の顆粒状エキスのお話です。
漢方に対しては「効くの?」とか「長く飲み続けないと効かないんでしょ?」と反応されることが多いですが、私は皆さんを早く治して差し上げたくて処方しています。明治以前は薬といえば生薬だったわけで、生薬は元々、急性期の病気にも使われていました。長く服用してもらって効かせるものもあるのですが、概して漢方は即効性があります。
西洋薬と漢方の大きな違いは、漢方は複数の生薬がブレンドされていることです。確かに、身体の中でどの生薬がどのくらい効果を発揮しているのか分からないことが多いのは事実です。漢方の歴史を紐解くと、これまで様々な生薬の組み合わせが試されてきました。中には組み合わせが悪く、死に至らしめてしまったこともあるでしょう。そして薬として一定の効果がある組み合わせのみ漢方薬のレシピとして生き残っているわけですが、このレシピ集の一つに『傷寒論』というものがあります。「漢方はエビデンス(科学的根拠)に乏しい」とはよく聞きますが、(表現は変ですが)漢方とは何千年にもわたる人体実験の集大成なのです。
漢方の作用機序として主に以下の4つがあります。①体温を上げる、②免疫を元気にする、③末梢循環を良くする、④抹消の水分を調整する。上記の作用は西洋薬では不可能ないし苦手なことが多いです。風邪を引いた時に抗生剤(抗生物質)を処方されたことがあるかもしれません。抗生剤とは細菌を死滅させるものであり、風邪、インフルエンザ、新型コロナ(COVID19)の起因はウイルスですので、本来であれば抗生剤は服用しても意味がありません。ウイルスに特効薬はなく(抗ウイルス薬は一般にウイルスの増殖を抑えるのみ)、身体の免疫がウイルスを退治してくれるのを待つしかありません。体温が上がると一般に身体の様々な反応が促進され、免疫が元気になることはウイルスを退治することに極めて重要と言えます。当院は医師が一人しかおりませんので、私もウカウカ風邪を引いてはいられません。風邪っぽいなと思ったら麻黄湯という漢方を服用して体調を整えています。
もちろん治療に西洋医学(西洋薬)は欠かせません。しかし、東洋医学(漢方を含む)をうまく取り入れることによって診療をより良くしていければと思っております…