院長あいさつ


この度、ホームケアクリニック北斗星を開院しました浅川朋宏と申します。

地域住民の皆様に少しでも寄り添える、また地域住民の皆様から少しでも心の拠り所としていただける医療者、医療機関となれるよう精進していく所存です。

関係者の皆様、地域住民の皆様に置かれましてはご指導、ご鞭撻のほど何卒よろしくお願い申し上げます。

院長 浅川 朋宏

【経歴】 

北海道大学医学部卒業後、北海道、伊豆にて地域医療、へき地医療に従事。令和5年5月、函館にてホームケアクリニック北斗星開設。

【得意分野】 

プライマリケア、総合診療、地域医療

ホームケアクリニック北斗星の開設によせて

長文ですので、時間に余裕のある方にご一読いただけますと幸いです。

地域への第一歩

私が医学科初学生のころ、どのような医療を志し、どのような医師になろうか漠然としていた。それを知ってか知らずか、大学の恩師が私にある課題を課した。ライフストーリー(人生の物語)の聴取である。在宅療養をする患者や在宅介護をする家族、様々な背景を持つ方々からライフストーリーを聴かせていただき、私がいかに患者や家族というものに無知であるかを痛感させられた。患者や家族のことをもっと知りたい…医学の勉強の傍ら大学の外に飛び出し、地域住民からライフストーリーを聴くことがキャンパスライフの一つとなった。私が地域に関心を抱き、地域に足を踏み入れた第一歩である。

第二の故郷

私が次にライフストーリー聴取のフィールドとして選んだのは夕張だった。夕張はかつて炭都として約14万の人口を有する北海道有数の産業都市だったが、石炭産業の衰退とともに岐路に立たされた。炭鉱から観光へ、当時の施政者により夕張は地域再生のモデルケースとして持て囃されたが、やがて立ち行かなくなり2007年に財政破綻したのはご存知の方も多いだろう。そして悲しいかな、夕張市民への世論のバッシングも少なくなかったのである。しかし私が夕張で出会ったのは、歴史の荒波に翻弄されながらも逞しく生きる住民の方々だった。そして何より彼らから聴く夕張や炭鉱の昔話が飛びっきり面白い。私はいつしかすっかり夕張にハマり、気づけば学生時代の半分にあたる3年あまり夕張に通い詰めていた。夕張や炭鉱のことを熱心に話す私に「アンタ、夕張出身どころか夕張に縁もゆかりもないのにね…」と母親から呆れられたものだった。夕張の方々には本当に良くしていただいたが、医療とはどうあるべきか、そもそも医者とはいかなる存在なのか夕張の方々から教えていただいたと思っている。私にとって夕張とは、医師として育ててもらった第二の故郷なのである。

第三の選択肢

大学を卒業し医師となってから、なんと夕張で働くご縁をいただいた。夕張では医療過疎地の例に漏れず、一般外来や救急外来、病棟管理や老健管理、訪問診療や施設嘱託医とありとあらゆることをこなさなければならなかったが、夕張在職中で特に誇りに思っていたのが訪問診療だった。可能な限り住み慣れた自宅で過ごしたい、または人生の最期を愛着ある自宅で迎えたいと願う患者、そしてその家族に「24時間お支えしますよ」と自信を持って言うことができた。患者や高齢者の療養先として病院や施設に加え、第三の選択肢としての自宅を、自信を持って提案できたのは大都市を除けば夕張だけだった。しかし、医者一人で患者や家族を24時間支えることは不可能である。同僚医師を始め訪問看護師、ケアマネジャー、訪問ヘルパーなど多職種の協力が不可欠だ。また患者がショートステイ時や入院時における施設や病棟スタッフの協力も忘れることはできない。夕張在職中、私は実に多くの方々に支えられてきた。夕張でお世話になったかつての同僚や関係者の皆様に改めて厚くお礼申し上げます。

さて話を道南に戻す。以前、道南で働いていたご縁でこの度ホームケアクリニック北斗星を開設させていただきました。まずは道南の皆様に、第三の選択肢として在宅医療を提供させていただくことで道南の医療体制に微力ながら貢献していく所存です。ゆくゆくはその地域にとって相応しい地域医療や地域包括ケアシステムを、関係者や地域住民の皆様と共に練り上げていく一端になりたいとの希望を胸に秘めております。関係者と地域住民の皆様に置かれましてはご指導、ご鞭撻のほど何卒よろしくお願い申し上げます。

2023/5/1 浅川朋宏拝