自宅への想い①
60代女性 函館近郊のB町
転倒受傷して頻回に緊急受診する患者がいた。ついに私の当直時にも、脱臼骨折して彼女は現れた。函館での治療、リハビリを終えて私の外来を訪ねてくれたが、なぜか全身がむくんでいる。お薬手帳を見て多剤内服が原因と推察した。よく転倒するのも薬によるふらつきが原因だろう。薬をもらうために、持病と障害を抱えた不自由な身体で2時間かけて月に何度も函館にバス通院していた。『一人暮らしは厳しいな』、遠方から同行していた家族も同感だった。函館の施設入所も睨みつつ、内服調整と称して入院とした。入院中、家族と施設見学を重ねたが良い施設が見つからない。「家に帰りたい…」との彼女の言葉に、函館への通院を3か月に1回に減らすべく訪問診療を導入して自宅退院とした。訪問初日、綺麗に掃除された部屋で出迎えを受けた。亡き夫が残してくれた家で満面の笑みを浮かべる彼女を見て、自宅に戻して正解だったなと感じた…