旧友を看取る…
これは私が自分の旧友を看取ったという話ではありません。
60代男性、肝ガン末期。出生は函館だが、それまで函館から200㎞以上離れた場所で生計を立てていた。亡くなる2か月前に肝ガンと診断され、死ぬなら寄る辺ない地ではなく生まれ故郷で死にたいと決し、残る体力を振り絞って道南に戻ってきた。旧友宅に身を寄せていたが、体調が悪化して搬送され、旧友宅で最期を迎えたいと希望されたため当院に紹介された。看取る人が旧友なんて果たして大丈夫なのだろうか、一抹の不安を感じながら二人に逢いに行った。本人はまだ少し元気が残っており、「先生、分かってるな。いざとなったら苦しくないように逝かせてくれ…」というのが本人の口癖だった。旧友は穏やかな方で、「ご不安なことも多々あろうかと思いますが大丈夫でしょうか?」と訊ねると、「彼は旧知の先輩なんで何とか頑張ります…」とのお返事だった。
最初は近くの温泉や共通の知人に逢いに行く体力が残っていたが、やがて臥しがちになった。室内で転倒したり、トイレを失敗しても旧友がフォローしてくれるばかりか、本人が口にしやすい食べ物、飲み物をこまめに摂らせてくださった。本人は威勢の良い方で、ベッドから起き上がり、無理に動き出そうとするため旧友は大変だったろうと思う。「いっそのこと逝ける薬はないのか?」と本人から豪快に訊ねられたが、旧友と二人きりの時はこの若さで亡くなる運命に涙することもあったという。道南に戻ってきて1か月後、旧友宅で息を引き取った。
「●●さんのご協力がなければとても家で看取ることはできませんでした。自分の家族を看取るのだって大変なのに、どうお礼を申し上げて良いやら感謝の言葉も見つかりません…」と旧友にお礼をすると、「彼の希望を叶えることができて良かったです…」とのお返事だった。病に倒れても看病を頼める友人など私には一人もいないなぁと自分の人徳の無さを恥じ入るばかりだった…

