在宅看取りの様々な形…

①70代男性、食道ガン末期。妻と二人暮らし。夫婦ともに本人お手製のログハウスで療養したいと自宅退院した。しかし、二人とも病状に対する不安感が強い。本人は病状によっては再入院も考えているが、妻は出来れば自宅で夫と最期まで過ごしたいと思っている。本人の疼痛と嘔気を抑え、訪看とケアマネが夫婦を心身ともに支え、二週間後に自宅で息を引き取った。

②80代男性、食道ガン末期。妻と二人暮らし。自宅で最期を迎えたいとの本人の強い希望で自宅退院となった。しかし妻の不安感は大変強く、出来れば最期は病院で、実は今すぐにでも再入院して欲しいとさえ思っている。疼痛はそれほど強くなかったが、日に日に弱る夫に向き合い、妻は時に涙を流すこともあったが、訪看が妻を精神的に支え、1ヶ月後に自宅で息を引き取った。

③60代男性、肺ガン末期。脳転移による意識障害が出現し、治療が尽きたところで妻が在宅看取りを決断した。妻と二人暮らしだが、三人の娘が交代で母を支えた。本人がまだ若く、さしたる苦痛や呼吸困難感もなかったため在宅療養が二ヶ月に及んだが、最期は総勢20名近い家族に見守られて息を引き取った。

在宅看取りの形は様々だが、在宅看取りでは家族をいかに支えるかが重要だと考えている。在宅介護をされる家族には以下のようなお話をしている。「もちろん闘病されているご本人のことは心配です。でも、本人の病状はある程度、薬でコントロールできます。本人がまだ動けているうちは介護されている家族が身体的にキツい。病状が進み本人が動けなくなると、日に日に弱る本人を目の当たりにし家族は精神的に辛くなります。僕たちは介護されている家族がとても心配なんです。だから、介護されている家族を支えることを重要視しています…」

在宅介護が長いほど家族をお看取り後、体調を崩されることがある。③の妻を遺族訪問した際、「家族を看取った後に緊張感が抜けて体調を崩される人がいます。お母さんは大丈夫ですか?」と訊ねた。「私も体調が悪い時は、先生にアンペック(坐薬タイプの医療用麻薬)を処方してもらわないとね⁉︎」との妻の回答に一同大笑いした。『このお母さんなら大丈夫だな…』と安堵するのだった…