実臨床は難しい③(三周年の感謝を込めて)

医学生の頃、5〜6人のグループに分かれて、一年かけて大学病院の全診療科を実習に廻るポリクリというものがあった(今は少し制度が変わっている)。ある診療科では、教授が廻ってくる学生と昼食会を開き、その席で教授が学生一人ひとりに質問させるのが恒例だった。教授は日頃、質問の内容でその学生のレベルがわかると話していたので、私は教授に以下のような質問をした。

「北海道難病連のある全道大会で、先生の患者さんが登壇され、先生とのエピソードをお話されていました。北海道に自分の病気を診てくれる医者がいなくて困っていた時に先生が赴任されてきた。初対面の時、『今日は貴方とお会いできて良かったです。私はこの病気をライフワークにしているので私と一緒に頑張っていきましょう…』と先生に声をかけられ、その言葉にどれだけ救われたかわからないと仰っていました。現代医学をもってしても如何ともしがたいことが多々あると思います。そのような少し難しい患者さんとこれまでどのように向き合ってこられたのか向学のために教えてほしい…」

教授の回答は、「やっぱり研究だよね…」ということだった。まだ実臨床も知らない青二才の医学生だった私は、『そんな話が聴きたいんじゃないんだよなぁ…』と残念に思った。しかし臨床に出るようになり(まだまだ青二才だが)、教授が伝えようとしたことが少しは分かるようになった。医者の第一の使命は、患者の病気を治すことだから(現に難病患者に「治してほしい…」と言われたこともある)。そして、このエピソードを読んだ臨床医の6〜7割の方が教授に共感するのではないだろうか…

何をお伝えしたかったかというと、医師にとって自分のやりたい医療ができることはこの上ない幸せなことなのである。教授がやりたかったことは(研究も臨床も教育も)世界に通用する教室を作ることであり、私がやりたいことは(教授と同列に語ることは甚だ恐縮だが)地面に這いつくばって泥水を啜るようなベタベタな地域医療なのである。まずは、私のような我儘な院長を支えてくれている当院のスタッフ達に感謝したい。次に、私のような出来損ないの医者と一緒に仕事をしていただいている関係者の皆様にお礼を述べたい。そして、私のような青二才で若輩者の医者に変わらぬ愛情を注いでくださる患者家族の皆様に深謝いたします。三年もクリニックを続けることができましたのは皆様のご支援のお陰です。私ほど幸せな医者はいません…